「HPをリニューアルするに当たって」
〈更新日: 2011年03月01日 〉 ※写真が掲載されている場合は、クリックすると拡大表示されます。
今回、当山のHPを10年ぶりに更新することになった。
私が自坊のHPを持った頃は、まだお寺にHPを持つことなど考えられない時期であった。
勿論、お寺がそうであったのと同じく田舎町の行政組織にも会社や事業所にもHPの必要性など全く考えられない時代でもあった。
考えてみれば平成13年頃の当山のHPは、この田舎町のどこよりも早い初めてのHPであった。
勿論、この留萌管内においても最初のHPであったように思う。
オフィスアミューズの木村 靖社長に勧められHPを製作してもらったが、当時は大評判のHPであったように思う。その為か当山のHPが公開されるや否や各々地域や会社、事業所が急速に競ってHPを持つようになったと考えている。今思うと画期的な出来事であったようだ。
ところが10年一昔というが、時代変化の波は比類の予知はない位大きく、そして過激なまでにも早い時代変化の波が私どもに押し寄せている。
先日、「朝寺の会」代表の山田繭子さんから
「住職、今の時代は、HPを持っていることは当たり前ですよ。そしてHPが常に更新されていないと、その会社や法人に注目が集まらないのですよ」
「今では、チラシや雑誌、新聞で会社や法人を広告するよりも、会社や法人がHPを持って広告が出来ているか否かが社会的に高い評価の対象につながっています。そして現代社会では、HPを持っていない会社や法人では、逆に社会には信用されないのですよ」と言われた。
このお話を伺ったとき私は、愕然とした思いがある。
「そして、随分時代遅れの人間に成り下がってしまっているなぁー」とつくづく感じたものであった。
確かにデジタル機器やインターネット関連機器などは猛スピードで新しくなっている。
余りにも早いので変化のスピード追跡を諦めてしまっている自分を見つめたとき、最早過去の人間なり下がっているなと感じさせられる時が多くなった。
でも、そんな早い波をもろに被っている一般の人々は、みなさん便利で全てがバラ色に染まった現代時間を謳歌しているのかと見てみると、どうもそうではなくてその勢いに合わせ
様々な難しい諸問題に突き当たっていることにも気付かされる。
そんな事態を知ってしまうと、私自身にとっては、
諸問題に目を背け知らないふりをするだけの勇気は私には持ち合わせない。
この新しく大きな波を避けて逃げるのではなくて、なんとか多少なりとも波乗りが出来る程度に付き合うことが出来れば、新しく発生している現代の難問題やどうしても解決しなければならない問題に関わってゆけるのではないかと私なりに自分を奮い立たせ勝手に考えるのである。
インターネット普及は、今や国の政治をも動かすようになった。
チュニジャ、エジプト、リビア、バーレンなど中東の多くの国々の政変はまさにインターネットによるものであった。
昨年の尖閣列島ビデオ事件、そのことによる中国国内の反日運動や
中国政府批判運動などもインターネットによるものだ。
これまでのメディアは、新聞、テレビ、ラジオが主流であった。そして、そこにはメディアが人為的に作られた情報によって国の世相を大きく左右していた。
ところが強権的で一党独裁国であるリビア、チュニジャ、中国、北朝鮮、ミャンマーなどでは当然のごとく言論統制が敷かれている。
そこで流される情報は、まさに人為的に作られた偏ったものであり、国民は偏った統制された一色の情報に無理やり染められようとする。
しかし、人々の地金の色は隠せない。上塗りされたペンキは必ずはがれるものだ。
いや寧ろ上塗りをされても時間をかけてゆっくりとペンキを剥し自分の地金の色を磨いている。
言論統制で抑圧された国民は、表向きの顔はニコニコと平静を保っていても、腹の中に溜まった抑圧された不満エネルギーを発散させる時間と場所を虎視眈々と狙っている。
それが、昨今のインターネットで鬱積した不満を共有し合い、あのような国をも転覆させる力を発揮するまでに至ったと考えられる。今やインターネットの力はとても無視できるものではなくなった。
表を現実に生きる実社会とし、インターネットによる仮想空間社会、所謂バーチャル世界を裏社会として見たとき次のことが分かる。
表社会に生活する人間行動に対して、裏社会や影の社会の中に生きる人間行動が、表社会に生きる人々の人間行動を実質的に大きく左右させる現象が起きているのが現代社会といえる。
実は、このことはユング心理学におい良く使われる「無意識の意識化」ということと一致する。
ユングは、人間の心理には必ず「無意識化した自己」があり、
無意識が意識化した表向きの行動を規制していると説明する。
そして、それも各自の無意識が知らず知らずに表面に出てきて行動に表れるのである。
私も良く「貴方は、亡くなったお父さんから何も教えられていないのに不思議とお父さんと同じような仕草をするな」と言われることがある。
こんな普段は見えない「心の影」が人間の表面行動に表れて、突如として大きなうねりを起し、良くても悪くても社会現象に発展させてしまうのである。
インターネット社会は、表の現象も裏の現象をもその両方が一度に留出してくる社会を作ってしまったようだ。非常に複雑な社会になったものだと考えさせられる。
しかし、インターネットに参加していない人間や社会は、それでは一体どうなってしまうのだろうかと考えると疎外感を見てしまい恐ろしい空虚な世界にいるように思えるのである。
良しにつけ悪しにつけ、乗り遅れてもよいからインターネット社会の中に飛び込まざるをえない状況に追いやられているのが私も含めた現代人の姿であろう。
今回、自坊のHPをリニューアルするに当たり「何故リニューアルが必要なのか」、「何故HPがなければ現代社会やこれからの未来社会に適合して行く為に必要不可欠なのか」が段々と深く分かったように思えるのである。
ますます人間も社会も複雑になり、それだけ関係性の中から発生する諸事件や諸問題が計り知れなく多くなっていくことは間違いない。
あまり諸事情に振り回されず、しかし多少先回りをして考え、対応をとってゆけるためにもインターネット社会と上手に付き合って行かねばならないとあらためて感じたところだ。