「ティンプーからパロへ山越え」
〈更新日: 2013年6月26日 〉 ※写真が掲載されている場合は、クリックすると拡大表示されます。
~“祈りの国ブータンへの参拝旅行紀行記” 住職 高山 誓英の記録~
4日目は、ティンプーからハーという田舎町を通ってパロまでの山越えの移動日だ。
ハーという田舎町は、100メートルほどの本通りを歩けば何もない町。
ただ、気付いた事は、商店を覗くと中国製のグッズが多く売られていたことだ。理由を聞いてみた。
ハーの周辺地域は、ネパール国境に近い西ブータンに位置する。
その為、ネパール国境の抜け道を通って中国人が入っているらしい。
さらにはここを通ってチベット難民が逃げ込んでいるとのことだ。
ここでもブータンを取り巻く周辺の国々の政情を伺い知る事が出来た。
ハーからパロまで3,480メートルの山越えのとき、緑多い盆地を眺めたかと思うと険しく狭い山道を走る。
山の上から下を見渡すと米や野菜を生産する農家がポツポツと点在していた。
また、3,000メートル級の山の上にも小学校がある。
数人の若い先生と60~70人程の子供達が、山にへばりついた学校から道なりに1列になって歩いていた。賑やかな声が聞こえたかと思うと、バスに乗っている私達に向かって、叫けびながら手を振っている。
こんな不便なところでも普通に学校教育が行われていることに感心した。
これも教育費の全て国が見ていることによるからなのだなと感じた。羨ましい限りであった。
パロまで山道を走って3時間ほどかかるということだ。
途中、山の林の中で男女共トイレタイム。
「話の種になるからやってみよう」という思いであった。
山の頂上に登るにつけ段々と息苦しくなってきた。
考えてみれば富士山よりも高いところを走っているのである。
山頂で一服。遠くにチョモランマを望むことができた。
周囲を見渡せば日本の風景と似ている。
ブータンなのか日本なのか錯覚する気分であった。
山の上の崖淵に家がある。あれは、何かと問いただすと、「高い山の上にある建物は、修行道場の寺か尼寺だ」と言う。
「現在、日本のお坊さん2人がブータンのお寺に修行に来ています。3年3ヶ月3日間、瞑想と読経の修行をします。その間は、肉親に会うことは出来ません。そして、風呂に入ることも髪の毛を切ることも許されません」という説明があった。過酷な修行のようだ。
私が行った求聞持行という修行は、100日、50日の座禅瞑想、読経、山岳跋渉の修行であった。
ただしこの期間の修行中は、身内に何があったとしても面会謝絶であり電話、新聞等の情報も謝絶が強要された。しかし修行中は、寧ろ風呂に入って身体を清潔に保つ事はしていた記憶がある。
ただ、カミソリのような刃物の使用は禁じられていた。
ブータンの修行も日本の修行も、多少の違いはあるようだが、ほぼ同じであるように思えた。
曲がりくねった険しい山道を降りてくるとパロ空港の滑走路が目に入ってきた。
やはり空港がある分多少都会的な雰囲気を有している。
マンダラリゾートホテルに到着した。
ホテルは、相変わらずインド式の部屋でありシャワーはあるのだが風呂がない。
しかもシャワーに出るのは水だった。
まだ外は多少暖かいといってもブータンの水は冷たかった。
これにはいささか不満だった。